夫婦には同居の義務があり(民法752条)、正当な理由なく別居することはできません。しかし夫婦関係を続けている以上、時には相手との距離を置き、冷却期間として別居する事も有効な手段といえます。

◆別居中の生活費


さて別居生活が始まりました。しかし生活費(婚姻費用といいます)の問題は重大です。この別居期間中の婚姻費用はそれぞれが負担しなければならないものでしょうか?
冒頭で述べました通り、いくら別居していても、夫婦は協力して生活を営んでいかなければなりません。また夫婦の間には、相手方が自分と同じレベルの生活を続けていけるように扶養する義務があるため、婚姻費用も分担しなくてはならないのです。
つまり別居した途端に無収入になってしまう専業主婦などは、これまでと同じ生活レベルの維持を夫に求める権利があるということです。

生活費(婚姻費用)とは主に以下を指します

・衣食住の費用
・医療費
・子供の教育費や養育費
・交際費等など

婚姻費用の分担請求には同居・別居を問わないため、生活費を渡さない場合はたとえ同居していても婚姻費用の分担請求をすることができます。

◆婚姻費用についての話し合い


婚姻費用の分担額は、夫婦間の話し合いにより合意するのが最も簡単な方法ですので、両者の話し合いがスムーズに進みそうならば別居中に月々精算しても構いませんし、別居終了時(離婚時や再同居時)に一括精算しても構いませんが、話し合いがもつれそうであるならば、別居の開始と同時に請求するのがよいでしょう。仮に家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てた場合、別居を開始した時期からではなく、請求がなされた時をスタートとみなすからです。

◆調停・審判


話し合いにより夫婦が合意に至らない場合は家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停申立をすることができます。夫婦の資産、収入、支出など一切の事情について当事者双方から事情を聞き、必要に応じて資料等を提出してもらうなどして話し合いを進めます。
調停でも合意できない時は家庭裁判所の審判により婚姻費用の分担額を決めることになります。これは判決と同じ効力を持っているため、支払が滞れば、強制執行により財産(給料など)を差し押さえることも可能です。

◆分担額


一般的に分担額は4万〜15万円程になるといわれています。分担額について法律的な決まりはなく、所有している財産も各夫婦に応じてそれぞれ異なるため、一概にいくらと決まっているわけではありません。家庭裁判所が分担額を判断する代表的な項目は以下になります。

image有責割合
別居に至るまでの破綻の原因がどちらにあるかということです。例えば不貞行為などが挙げられます。

image収入
夫婦それぞれの収入や生活レベルによって額が増減します。

image妻の就労や家事労働
働きたくても働けない場合(幼い子供がいるなど)や、働けるのに働かない場合などの事情を考慮して額が増減します。

image養育費
扶養義務があるため、上記の有責割合とは関係なく婚姻費用として請求することができます。


◆請求方法


申立先

相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所

申立に必要なもの
申立書1通
夫婦関係調停申立書(家庭裁判所またはホームページにて入手することができます)
 
夫婦の戸籍謄本1通、住民票
住民票は不要な場合があります。
 
費用
・収入印紙1,200円
・連絡用の郵便切手(数百円程度)
その他添付資料
給与明細など

【補足】
調停では収入や支出、資産、有責割合に基づいて話し合いが行われるます。しかし妻が夫の収入を知らない、夫が教えないということも多々あります。この場合、相手方の住所地を管轄する役所にて課税所得証明書を取得することができます。
※自治体によっては夫婦であっても本人以外の人物に交付しない場合があります。


◆審判前の保全処分


調停・審判が成立するまでには時間がかかります。幼い子供がいて働くことができない場合など、その間の生活費などに困るときなどは調停前の仮処分申請書を提出することができます。調停委員会の判断により、婚姻費用の仮払いの仮処分を命ずることができます。
しかし、この処分には執行力がないため、利用される例は少ないようです。

マメ知識(別居後の不貞・浮気)


少々ややこしい話になりますが、相手の浮気によって夫婦関係が破綻したというのであれば、これは立派な浮気であるとみなされ、不貞行為が離婚理由となります。

しかし単純に「夫婦仲が悪い」とか「姑との関係がうまくいかない」などの理由によりAとBが別居し、その後Bが浮気をしても、これは不貞行為とみなされない場合があります。それはBが浮気をするよりも前に、既に別居していることによって婚姻生活が破綻しているとみなされてしまうからです。

この時、離婚理由は「不貞行為」ではなく「婚姻を継続しがたい重大な事由」と見なされる可能性が高く、離婚理由が「性格の不一致」などと同じように「どちらにも非がある」という様に捉えられてしまいます。

例えばAがBに対し慰謝料を請求したい場合、「不貞行為」と「婚姻を継続しがたい重大な事由」では慰謝料の額が変わってきます。一般的に不貞行為の方が高額になると言われております。しかしBはなるべく金銭を支払いたくありません。そこでBは、別居前から浮気をしていたのにもかかわらず、適当な理由をつけて別居し「既に婚姻生活は破綻していた」と主張するケースもあるのです。

そのようなことを言われないために、また不貞の証拠を集めるためのポイントを幾つか挙げてみました。
・ 自分から離婚を切り出さない
・ たとえ夫婦喧嘩をしても離婚は口にしない
・ 離婚届には署名押印しない
・ 夫婦喧嘩をしても暴力を振るわない
・ 完全な家庭内別居の状態にしない
・ 不貞行為の証拠が集まるまでは別居しない


>>不貞行為(浮気)・証拠
>>法定離婚原因